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小林よしのり
2016.12.22 05:52メディア

自称・中流、9割の衝撃


今朝の朝日新聞の、小熊英二、井出英策両氏の「論壇時評」

は面白かった。

内閣府の調査によると、いまだに全体の約9割が中流だと

考えているという。

これには驚いた。

9割が自分を中流」だと思い込んでいるって凄くないか?

客観性がまったくない!

 

年収300万円以下の労働者は今や4割以上である。

平均所得以下の者は6割を占めている。

 

非正規労働者が2000万人以上いて、その7割が年収200万円

以下だという。

非正規雇用で働く男性の半分は、世帯収入を支える主稼得者で、

その男性の375%が必死で働いても困窮するワーキングプア

になっている。

もちろん女性の非正規雇用の4757%も生活困窮者だ。

 

そんな惨状なのに「9割が自分を中流」だと思い込んでいる!

 

生活が苦しいと実感しているのに、自分はまだ中流の下位

あたりに踏みとどまっていると信じている者たちが、

NHKで放送された貧困に苦しむ女子高生を見たとき、

「自分の方が苦しい」と怒りの声を上げていたのだ。

自分の血税を、こんな甘ちゃんの女の子の生活保護なんかに

使わせてたまるかと。

 

ネット右翼は実は「年収が多い」「子供がいる」「男性」で、

「正社員のお父さん」だったりするという。

彼らは終身雇用や専業主婦などの昭和の価値観を達成したい

と思いつつ、それが危うくなっている不安感・恐怖感から

生活保護受給者などの弱者を叩くのだ。

 

これはトランプを支持した層と同じで、低所得層の増大に

危機感を抱く中間層が、自分より下層を叩く人間心理から

らしい。

下層の増大が自分の安定した暮らしを脅かすと思うのだろう。

上を攻撃せずに下を攻撃するのが、日米の右派の共通の

心性のようだ。

サンダースの支持者の方が、上を攻撃するから、まだ知的

なのだろう。

 

弱者に優しい政策をとると、右派・中間層が「甘えさせるな」

と反発する。

だから弱者に厳しい安倍政権が支持を得る。

9割が自分を中流」だと勘違いしているのは、安倍政権に

とっては実に愉快な状況だろう。

 

もっと絶望が必要だ。

わしは上流層だから、美女とワインでも飲みながら、

勘違い中間層の断末魔の叫びをBGMに、ゆったりフレンチ

でも楽しんでいよう。

小林よしのり

昭和28年福岡生まれ。漫画家。大学在学中にギャグ漫画『東大一直線』でデビュー。以降、『東大快進撃』『おぼっちゃまくん』などの代表作を発表。平成4年、世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』を連載開始。『ゴーマニズム宣言』のスペシャル版として『差別論』『戦争論』『台湾論』『沖縄論』『天皇論』などを発表し論争を巻き起こす。
近刊に、『卑怯者の島』『民主主義という病い』『明治日本を作った男たち』『新・堕落論』など。
新しい試みとしてニコニコ動画にて、ブロマガ『小林よしのりライジング』を週1回配信している。
また平成29年から「FLASH」(光文社)にて新連載『よしりん辻説法』、平成30年からは再び「SPA!」(扶桑社)にて『ゴーマニズム宣言』、「小説幻冬」(幻冬舎)にて『おぼっちゃまくん』を連載開始し話題となっている。

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